所信表明(平成27年6月議会定例会)


 平成27年6月定例会の開会にあたり、市長に就任して初めての定例議会でありますので、議案等の説明に先立ち、私の施政に対する所信の一端を申し述べさせていただき、市議会議員各位を始め、市民の皆様のご理解とご協力をお願い申し上げます。 

 多くの市民の皆様から「大館を変えよう」との声をいただき、早一ヶ月が過ぎました。改めてその職責の重さを痛感しながら、日々全力投球をしているところであります。

 私は、20年前の平成7年、大館市議会議員としてこの議場で政治活動の第一歩を踏み出しました。議員として、先輩議員の皆様からのご指導・ご鞭撻により、「秋田県北部エコタウン計画」の企画立案などに携り、地方自治体は、国や県を動かす力を持っていること、確固たる意志と明確でしたたかな戦略があれば、それが実現可能であることを実感いたしました。そして2期8年の間に議会の活発な議論を通じて多くのことを学ばせていただきました。
 いわばここが私の政治活動の原点であり、この思いは、市長になった今も不変であります。
 また、更に政治を学ぶため、国会議員秘書官に身を転じ、国の施策の考え方やアプローチなど多くの経験を積んでまいりました。
 今こそ、私がこれまでの20年間で学んできたことを、全身全霊を傾け、ふる里大館の未来づくりに還元し、御恩返しをすべき時であると思っています。

 今、全国的に少子高齢化と人口減少が大きな課題となっており、地方自治体の共通のテーマとなっております。
 昨年、日本創生会議が非常に衝撃的な報告書を発表いたしました。いわゆる消滅可能性都市であります。秋田県においては、大潟村を除くすべての市町村が該当し、本市もその中に入っております。
 市民お一人おひとりが、危機意識を共有し、そして、住んでいる人口は減るけれども、大館にお越しいただく、来る人口いわゆる「交流人口の拡大」をいかにして図っていくか、あらゆる政策の根本はこの一点に尽きると考えているところであります。

 今、政府は、円安を誘導し、日本製品の輸出の拡大と海外からの誘客を増加させています。新しい大館は、このアベノミクスによる経済政策を上手に活用してまいります。メイド・イン・大館の製品や食材、そしてサービスの輸出と多くのお客様にお越しいただける大館づくりの実現のため「ものづくりの力」と「物語を作る力」、このふたつの力をきちんと整えること、これが私福原のフクノミクスとして最も重要な政策と考えているところであります。
 交流人口を増やし、外貨を稼ぐ政策の先にあるもの、その真の目的は、確かな財政基盤の構築、そしてふるさと大館の「まちづくり」であります。「まちづくり」とは、単なる都市デザインではなく、社会、経済、文化、環境等、生活の根幹を構成するあらゆる要素を含めた暮らしそのものの創造、いわば「暮らしづくり」であります。そして生活の場が長い年月をかけて歴史となり、伝統文化となって将来に繋がってまいります。先人から受け継いだ「人」と「暮らし」、そして「まち」を決して消さない、絶やさないようにしなければなりません。
 そしてこの政策は、必ずやふるさと大館の未来を担う子どもたちには、夢と希望にあふれた多様な選択肢を、これまでふるさとを支えていただいた世代の皆様には、安全・安心をもたらすはずであります。

 私は、選挙の公約で大館に築きたい5つの柱をお示しいたしました。

 1つ目は、「匠のまち大館」であります。次世代のメイドインジャパンを支える匠のまちづくりを目指し、仕事と働く場所を増やすこと、そして技術力をもつ地元企業や地域資源の磨き上げを推進するため国内トップクラスの企業・大学等との連携により、新しいサービスや製品を開発する力の向上を図ります。
 また、地域経済を支える中小企業や小規模事業者へ積極的な支援を行い、「中小企業・小規模事業者ビジネス創造等支援事業」や「ものづくり・商業・サービス革新事業」などを最大限活用し、設備投資や販路拡大等の取り組みを応援してまいります。
 さらに「起業の大館」を目指し、「ベンチャー創造支援事業」などを活用しながら、産業の新陳代謝とベンチャー加速化を進めてまいります。また、商工業界や地元の学術機関と連携し、若い世代への技術継承と後継者育成の仕組み作りを構築していきたいと考えております。

 2つ目は、「連携のまち大館」であります。農業は、大館最大の輸出産業であると私は思っています。大館の基幹産業であります農林業と商工業の連携を進め、6次産業化など、開発能力を高めながら、食材から食卓へをキーワードに、国内だけではなく世界を見据えた販路拡大を目指してまいります。
 今、農業は、米価の下落、後継者の問題など大変な状況であり、農家の皆様のモチベーション向上が急務であります。
 そのためには、安心して農業に打ち込める環境づくりが重要であり、農業インフラへの投資や成長産業化に向けたロボット、インターネット技術等の活用支援、「日本型直接支払い制度」の推進にあわせた「大館版 中山間地域等直接支払い制度」の充実などにより、農家の所得向上を図ってまいります。
 また、里山エネルギーや再生可能エネルギーの導入を積極的に推進し、地域の特性を活かした新エネルギー先端都市を目指してまいります。

 3つ目は、「にぎわいのまち大館」であります。本市は、本州で最も多くの国指定天然記念物を有しております。大館の魅力の対外発信力強化のため、産官学の連携を推進し、様々な観光資源を磨き上げ、宝物王国大館を全国に発信してまいります。
 先人、先達そしてご先祖様から受け継いだ歴史と文化そして伝統を、今一度まちづくりの羅針盤とするために、「歴史まちづくり法」を最大限活用し、歴史と文化の「ものがたり」を作りながら、まちづくりや新庁舎建設、観光拠点の整備を進めてまいります。
 また、一人でも多くのお客様に来ていただくよう、全国規模の大会等を積極的に誘致してまいりたいと考えております。
 さらには、県北自治体間の連携を深め、大きな歴史のストーリーを作りながら、県北地域全体での観光振興につなげていきたいと思っております。

 4つ目は、「ひとづくりのまち大館」であります。
 スポーツや学びを通じ、人とまちを育てていくことを念頭に、年齢に関係なく、世代を超えた、意欲ある市民のくらしの質を上げる施策を展開してまいります。スポーツの力による健康で活力あふれる大館の実現やふる里キャリア教育の更なる推進を図りながら、大館における教育体系「大館カリキュラム」を策定し、大館ならではの学びの場を構築してまいります。
 さらに、命をさきわい、老いを寿ぐ、そのような高齢化を見据えた桃源郷づくりなど、これら大館が創り出す学びの場が、多くの人を魅了し交流人口の拡大に繋がるよう努めてまいりたいと考えております。
 また、子育て版ワンストップサービスの充実や子どもたちが安心して放課後を過ごせるような関係機関の連携など、子育て世代の負担が軽減となるニーズに対応した施策を展開してまいります。
 さらには、商工業界と連携しての人材養成プログラムの策定や大学奨学金事業を未来づくりの投資と捉え、郷土の発展に貢献する人材育成を進めてまいりたいと考えております。

 5つ目は、「安心のまち大館」であります。
 日本は、世界の他の国々に類を見ない速度で高齢化社会へと進んでいます。これは、本市においても、例外ではなく、今後は、地域が一体となって、安心して生活ができるような医療・介護・福祉の連携をさらに強化した仕組みづくりが必要であります。
 特に医療・介護にあっては、急性期医療機関である市立総合病院を頂点に、一次・二次医療機関の有機的な連携はもちろんのこと、介護との連携は益々重要となってまいります。例えば社会福祉施設での医療行為基準の緩和などによる施設医療体制の構築など新しい形が模索されなければなりません。
 使いやすい介護の実現に向け、「通所介護や訪問介護、ショートステイ」等を組み合わせた多機能型サービスの整備や医療スタッフの人材確保にも取り組み、住まい・介護・生活支援など多方面から、利用者に寄り添い、身近に感じていただけるような、大館ならではの地域包括ケアシステムの構築を目指してまいります。
 さらには、事後の治療いわゆるケアと併せ、健康都市・大館に向けた事前の予防スタイルを構築し、様々な機関や施設と連携しながら、市民の皆様の健康維持・増進を図ってまいります。
 そして、昨今頻発する自然災害に対応する防災・減災力を高めるため、各行政機関はもとより、消防団や町内会、企業などと連携し、より実践的な総合防災訓練、合同水防訓練及び地域別訓練の実施、避難所運営組織の構築、消防団の活動体制の充実等を推進し、自助・共助・公助による災害に強い安全・安心なまちづくりに取り組んでまいります。

 以上、申し述べました5つの柱は、どれもが重要な施策であると同時に、その実現を通じて、現在、内閣府が有識者会議を立ち上げ検討している、大都市圏に住む活動的な高齢者世代の地方移住の促進に係るモデル事業の受け皿に当市大館がなり得るものと確信しております。

 今、まさに先人が経験したことのない困難な状況が私たちの前に広がっております。しかしながら、この絶望的な未来を乗り越えていく勇気を大館市民は持っていると私は信じています。
 合併10周年の今年は、まさに「地方創生元年」であります。そして、地方創生は、真の日本再生であり、今こそ地方自治体の主体性が問われています。

 「ピンチをチャンスに、危機を好機に」、私たちの挑戦はこれから始まります。

 長として、市民の先頭に立ち、大館再生、大館再興:大館ルネッサンスの始まりと致したいと考えておりますので、重ねて市議会議員各位並びに市民の皆さまのご支援とご協力を賜りますようお願いを申し上げ、所信表明とさせていただきます。

平成27年6月2日

秋田県大館市長 福 原 淳 嗣 
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