所信表明(令和元年6月議会定例会)

令和元年6月定例会の開会に当たり、引き続き本市の政を担わせていただくこととなりましたので、議案等の説明に先立ち、今後の市政運営に関する所信の一端を申し述べさせていただき、市議会議員各位をはじめ、市民の皆様のより一層の御理解と御協力をお願い申し上げます。

4年前、私は、「ものづくりの力」と「物語が持つ力」、この2つをきちんと整えることが最も重要な政策であると申し上げました。そして、交流人口を増やし、外貨を稼ぐ政策の先にある真の目的は、確かな財政基盤の構築であり、その財源をまちづくりに生かすことにより、市民の皆様に将来への希望と安全・安心をもたらせるはず、という考えをお示ししました。その信念のもと、東京一極集中、人口減少が進行する中、市民の皆様に前向きな姿勢を取り戻していただくこと、未来志向を持っていただくことに注力し、大館が持つ未来を創り出す原石を「みがき」「つないだ」結果、この4年間で確かな手ごたえを実感することができました。

令和の始まりとともに幕を開けた福原市政2期目は、私たちの力、大館力を更に「みがき」「つなぎ」、未来に対して「ひらく」まちづくりを行ってまいります。そしてこれまでの取組みの全てを礎に、更なる高みを目指し、皆様に見える形で成果をお示しできるよう努めてまいります。

まちづくりを進めるうえでの政策の柱は、「匠」「連携」「にぎわい」「ひとづくり」「安心」の5つであることは、4年前から微塵も揺らぐことはありません。暮らしに直結する「ひとづくり」「安心」に重点を置きつつ、外に強い大館をつくるために、確かな基盤を確立する施策として、「匠」「連携」「にぎわい」を先行して進めてまいりました。この取組みを強力に推し進めることにより、大館は、国や県をはじめ、国内外問わず多くの仲間を創ることができました。2期目では「大館力をみがく、つなぐ、ひらく」を理念に5つの政策の柱を更に深化、拡大させてまいります。

1つ目の柱「匠」では、次世代のメイドインジャパンを支えるまちづくりを進めます。

第4次産業革命という歴史的転換点をしっかり見据え、大館の強みの一つでもあるものづくり企業の発展を支えるインフラの整備や、暮らしをつなぐ技術開発の支援を推進してまいります。小規模事業者の生産性向上や事業継続支援などについても、商工団体や金融機関など地元関係機関と協力しながら小規模基本法や小規模支援法を活用し進めてまいります。また、IT企業などのサテライトオフィス誘致を進めていく中で、地域資源を活用した大館だからこそできる新しいビジネスの仕組みづくりも進め、子どもたちに、大館にいながらも、世界を見てものづくりができるということを示してまいります。

さらには、サービス購入型の新しい公共事業や自動運転の社会実証実験の誘致、ロボットによる業務自動化(RPA)の導入など、新たな分野にも積極的にチャレンジしてまいります。

2つ目の柱「連携」では、農林業と商工業の連携による所得向上のまちづくりを進めます。

「農は国の(もとい)」「国の宝は山なり」。農林業は地方が誇れる地域固有の資源です。原石を磨き、光りを外に放つことにより、地域の活力を生み出し、働く場所が増えると確信しています。食品メーカーと地元食材をつなげる事例を更に積み重ね、世界を見据えた販路拡大に取り組みます。今年度、本市で開催される秋田県種苗交換会をJAとの連携により成功に導き、販路拡大の弾みにするとともに、新たな農業の可能性を発信する場として活用してまいります。また、基盤となる農地の集積と、森林の適正管理の推進による林業を軸とした地域産業成長化も積極的に進めてまいります。

3つ目の柱「にぎわい」では、交流のまちづくりを進めます。

世界的に認知度の高い秋田犬を基軸とした「ふるさと大館」のPRにつきましては、今後も積極的に進めてまいります。観光交流の受け皿として整備した「秋田犬の里」は、駅前エリアの回遊を図る核として、また、市内各地の観光スポットにいざなう拠点として活用し、観光客の滞留性向上につなげてまいります。また、「秋田犬の里」の整備を通じ更に強固なものとなった渋谷との絆を最大限に生かし、渋谷をキーワードとした「ものづくり&コトづくりプロジェクト」にも取り組んでまいります。

「3D連携」や、奥州藤原氏の物語に端を発した「東北ものがたり」につきましては、より深化させ、広域観光周遊ルートの確立を図り、大館能代空港の利用客数増加やクルーズ船のツアー客誘致、修学旅行の受入れ拡充につなげてまいります。

これらの取組みとあわせ、教育ツーリズムやサマースクールといった教育の産業化も更に推進するなど、あらゆる分野での交流を活発化させてまいります。

また、移住・定住対策として総務省が進める「ふるさとワーキングホリデー」にも取り組み、職場体験しながら大館暮らしを体感していただくことにより、大館ファン獲得に力を入れてまいります。

4つ目の柱「ひとづくり」では、ひとが育ちまちも育つまちづくりを進めます。

まちの持続に立ちふさがる最大の壁は少子化です。子育て支援につきましては、これまでも、子育て世帯に寄り添い応援する拠点として子育て包括支援センター「さんまぁる」を整備したほか、処遇改善による保育士の確保、保育所等の定員数増加や企業主導型保育施設の整備支援による受け皿の拡大、在宅での子育てに対する経済的支援といった待機児童対策に取り組むなど、積極的に進めてまいりました。

さらに今後は、子育て世帯の不安解消を図るため、子を生み育てる環境の更なる充実に力を注いでまいります。まずはニーズをきちんと捉え、子どもや子育て視点を大切にしたまちづくり「キッズデザイン」という観点で子育てしやすいまちづくりに取り組んでまいります。中長期的には、あらゆる世代が子育てに関わり家庭を持って子育てしたいと思えるシステムづくりや、多様な女性の生き方を認める寛容な社会の形成も目指してまいります。

医療費などの社会保障費の抑制や健康寿命の延伸など、現代社会が取り組むべき課題を克服する手段の一つとして、スポーツの持つ力に注目しており、「スポーツを楽しむまちづくり」にも取り組んでまいります。東京2020(ニーゼロニーゼロ)オリンピック・パラリンピックの開催が約1年後に迫ってまいりました。みんなのメダルプロジェクト、選手村への大館産秋田杉の供給のほか、タイ王国ナショナルチームのホストシティとして積極的に関わり、スポーツへの関心を高めてまいります。さらには、官民共同により「スポーツコミッション」を設立し、オリンピック・パラリンピック以降も、スポーツを通じた交流の促進による地域の活性化を目指してまいります。

様々な分野で人手不足が叫ばれる中、企業の人材確保は喫緊の課題となっております。女性が働きやすい環境を整えることはもちろん、元気な高齢者の意欲を喚起し、あらゆる世代に活躍していただけるよう取り組んでまいります。外国人労働者の受入れにつきましては、円滑な受入れ態勢の整備に向け、関係機関と連携しつつ組織を横断して取り組んでまいりたいと考えております。

全国から高い評価をいただいておりますふるさとキャリア教育につきましては、子どもたちだけでなく、あらゆる世代に展開し、世代を超えた学ぶ意欲にも応えてまいりたいと考えております。

5つ目の柱「安心」では、医療・介護・福祉が身近なまちづくりを進めます。

高齢者にとって暮らしやすく、子育て世代が安心して育児ができるまちを目指す意味において、市民の皆様の安全性の向上を図る必要があります。また、交流が進み大館を訪れるかたが着実に増えつつある中、だれもが円滑に移動できる環境も求められます。そこで、「バリアフリーまちづくり」に取り組み、あらゆるかたに優しいまちを目指してまいります。多くのかたが利用する拠点を重点的に整備し、つなげることで快適な暮らしを提供してまいりたいと考えております。

高齢化が進む一方で、介護人材の不足が危惧されており、高齢者を孤立させない「暮らしをつなぐまちづくり」も進めていかなければなりません。市では、昨年度、地域住民が集まる居場所「通いの場」を支援する「生活支援体制整備事業」を創設し、市内15か所の「通いの場」を支援いたしました。この取組みを市内全域に拡充して、地域内の支え合いを育んでまいります。

地方において、医師確保は大変厳しい状況であります。一定の医療水準を確保するため、県や医師会、大学などの協力を仰ぎながら、病診連携、病病連携を進め医療のネットワークを確立してまいります。また、医療・介護の連携も進め、生活支援から介護予防、介護、医療まで一気通貫で行う仕組みづくりにも取り組んでまいりたいと考えております。

暮らしに一番身近で欠かせない生活道路や水道などの社会インフラもまた、知恵を出し合い、一定水準を維持していかなければなりません。地域からの要望の声が高い生活道路の改修につきましては、可能な限り前倒しして進めてまいります。水道事業の安定的な持続には、中長期的な資産管理に基づく設備更新と健全な経営を両立する具体的な計画が不可欠であります。そのためのビジョン策定を進めるとともに、広域連携や官民連携の可能性に関する検討も進めてまいります。

平成は災害の多い時代でありました。その経験を踏まえ、有事のときに市民の生命と財産を守り抜く体制を築くため「災害に強いまちづくり」に取り組んでまいります。大規模自然災害発生時においても最悪の事態を回避できる地域社会を事前に整備する指針「国土強靭化地域計画」に基づき、国や県と連携しながら、中長期的な視点で強靭なまちづくりに取り組んでまいります。また、北東北3県の中心に位置する地の利を生かし、「陸援隊」として広く貢献できる体制の構築にも取り組んでまいりたいと考えております。

以上、5つの政策の柱を申し述べさせていただきました。これら5つの政策の柱を大館力で前に進め「内に優しく、外に強い大館づくり」につなげてまいります。

人口減少という時代の潮流は、1年、2年で克服できるとは決して考えておりません。しかしながら、地域間連携、官民連携の要として地方創生を牽引していく気概を持ち、英知を結集することで、必ず乗り越えられると確信しております。

市議会議員各位をはじめ、市民の皆様の御支援と御協力を賜りますよう改めてお願いを申し上げ、所信表明とさせていただきます。

令和元年6月4日
秋田県大館市長 福原淳嗣

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