秋田県と青森県の境界に広がる「白神山地」。
その最東端に位置し、古くから人々の交通の要衝であり難所でもあったのが、この「矢立峠」です。
古羽州街道「矢立峠道」は、出羽の国秋田より陸奥の国津軽への街道として、矢立杉の存在と共に貴重な歴史の道です。
また、旧羽州街道(明治新道)は明治10年に開通し、同11年英国婦人旅行家イザベラバードの紀行、同14年明治天皇行幸、同22年青森秋田乗合馬車開通、などの歴史が刻まれています。
旧国道7号、現在の国道7号が現存し、SL三重連で名高い旧国鉄のトンネルや橋脚も往時を偲ばせます。
天然秋田杉に代表される一帯はほとんどが国有林で、「やすらぎの森」「矢立峠風景林」として整備され、現在は遊歩道として残される「歴史の道」は、歴史探訪、小中学校の野外学習、癒しの森林浴、散策コースとして、周辺の温泉とともに親しまれています。
天然秋田杉
矢立峠では、日本三大美林の一つとして有名な「天然秋田杉」が見られます。
かつて一帯に広がっていた「天然秋田杉」も、戦後の復興用材などの伐採により、国道7号線沿いの一部を残すのみとなり、現存するものは大変貴重なものです。
「天然秋田杉」の定義については諸説ありますが、おおむね樹齢150~250年以上のものとされています。
年輪幅がそろい、木目が細かく強度に優れ、狂いが少ないことから、古くから住宅用の建築材として利用され、特に美しい柾目を利用した高級内装材、天井板等に使用されています。大館の伝統工芸品「大館曲げわっぱ」や「秋田杉桶樽」の原材料などにも活用されています。
この一帯に残る「天然秋田杉」の平均的な樹齢は300年、大きいものはそれ以上と推定されます。
周りにはミズナラ、ホウノキ、トチなどの広葉樹が枝を広げており、杉と広葉樹のバランスが良く美しい森を形成しています。
指定・選定
- レクリエーションの森「矢立峠風景林」(昭和47年指定)
- モデル的な健康保養の場「やすらぎの森」(平成9年選定)
- 「白神・八甲田緑の回廊」(平成14年組み入れ)
- 「後世に残すべき文化的景観」(平成15年文化庁選定)