令和6年9月定例会の開会に当たり、市長に就任して初めての定例議会でありますので、議案等の説明に先立ちまして、私の市政運営に対する所信の一端を申し述べさせていただきます。
まず最初に、私の市長としての基本的考え方につきましてお伝え申し上げます。市民の皆様が27歳の私に求める政治は、経験によるものではないと考えております。これまで日々地域を回り、そして選挙活動をすることを通じて「これからはまさに対話が求められる」、そう感じたところであります。私一人の力ではなく、皆様の知恵や経験と、私の行動力を掛け合わせられる政治を実現してまいります。
私はまだ、就任して8日目であります。まちづくりの方向性を皆様と共有させていただいたうえで、具体的政策につきましては、改めて市民の皆様、議員の皆様、そして職員の声をしっかりと聴いて反映し、各地域に合わせたきめ細かな政策を一緒につくらせていただく所存でございます。
私は「子や孫世代と共に栄える大館」というキャッチフレーズを掲げ、各地域の皆様に想いを伝えてまいりました。現在の大館市の人口は約6万6千人、高齢化率は40パーセントを超えています。大館の少子高齢化を克服するために、5つの柱をお示しいたします。
1つ目は定住人口の確保、若者流出対策であります。令和3年に、若者に聞いたアンケートにおいて、就職希望先に県外を選択した人は66パーセントもいました。その理由としましては、「生活が便利」「給料や福利厚生が良い」「希望する職種がある」となっておりました。
また、インターネットやはがきを通じて私の元に届いた声で一番多かったものが「職種を増やしてほしい」という声でした。そういった声に応え、若者が働きたいと思える職種、若者の選択肢を増やすことでこの地域に定住してもらう、そのために地元企業の第二創業支援や企業誘致を推進いたします。
2つ目は人手不足対策であります。企業の人手不足により、サービスを受けられないということが起きています。以前お話を聞いた介護施設では、数百人もの入所待機者がおりました。その他にも、経営が順調にも関わらず、後継者がいないためやめてしまうケースも増加傾向にあります。対策として、地元企業と連携した人材採用を行うことで、企業は人材の確保を、行政は人口の獲得を狙います。
3つ目は少子化対策であります。出生率増加のためには、もちろん制度も必要ですが、何よりも「子どもを産み、ここ大館で育てたい」という雰囲気を醸成していくことこそが一番重要であると考えております。沖縄県は可処分所得、平均年収ともに全国最下位ではありますが、出生率はトップです。
また、昭和41年の丙午(ひのえうま)の年には、前年に比べ出生数は約46万人減少したものの、翌年には約57万人増加しました。バブル経済は約51か月続きましたが、その間も出生率は下がり続けてしまいました。好景気だから、金銭的余裕があるから出生率が上がるのではなく、「子どもを産み、育てたい」という気持ちをいかにして抱いていただけるか、このことが大切なのであります。「子どもを産みやすいまち、そして育てやすいまち大館」となるよう環境づくりに取り組んでまいります。そして何より、子どもを産みたいけれど何かしらの理由があって産めない、そんな人達もしっかり支援していきたいと考えております。
4つ目は高齢化対策であります。高齢化対策においては、市全体の画一的政策、大きな政策を掲げて解決できるような問題ではないと考えています。なぜなら地域によって、地域ごとに抱えている問題が異なるからです。買い物の便が悪く困っている、交通の便をどうにかしてほしい、空き家問題を解決してほしいなど、地域によって抱えている課題は異なります。地域ごとに課題が違うからこそ、地域住民と共に、地域ごとにきめ細かな政策をつくりあげ、全市民が安心できる、医療・介護・福祉・生活の仕組みづくりを進めてまいります。
5つ目は新しい財源の確保であります。新たな財源の確保として、ふるさと納税の寄附額増加を目指します。ふるさと納税の寄附額増加において最も重要なのは返礼品の供給量確保であります。本市の返礼品はお米が大変人気でありますが、供給量が足りないことが課題となっております。そのため、事業者が生産量を増やすための支援を行ってまいります。
また、寄附先として大館を選んでいただくためのPR活動も積極的に実施してまいります。ふるさと納税によって確保した新しい財源については、大館市の将来を担う子どもたちへの投資へと活用します。
少子高齢化は、どこの自治体も頭を抱える大きな問題であり、私一人で克服できるものではないと考えております。だからこそ、各地をまわり「一緒に克服させて欲しい」とお願いしてまいりました。そして今、地方に求められるのは、地域ごとの課題や他自治体の成功事例を吸い上げ、議員の皆様と議論を重ねることで解決策を導き出していくことであります。皆様の知恵と力をお借りして大館を前に進めていきたいと考えております。
これからは地方の時代が間違いなく到来すると、私は確信しております。日本の価値は今どこにあるのか。大館には、秋田犬や比内地鶏、とんぶり、きりたんぽ、お酒、伝統工芸品、温泉、秋田杉、綺麗な水と広大な土地、そして鉱山で培った技術など、首都圏にはない様々な資源があります。これこそが大館が持つ、日本の価値であります。この地方資源の宝庫である大館市を全国に発信し、新たに挑戦する企業、新たに挑戦する人の後押しを行うことで定住人口と交流人口の増加を狙います。
最後に、誰よりも現場を知っているのは市役所の職員であり、市民の皆様とのコミュニケーションを大切にする市役所といたします。そして、持続可能な大館をつくるため、職員と様々な議論を重ねて政策を作り上げ、挑戦できる市役所を目指します。
「子や孫世代と共に栄える大館」の実現で、大館の医療・介護・福祉・生活・社会のインフラを守り、今まで以上に全市民が安心して暮らすことのできる明るい未来をつくるため、市議会議員の皆様並びに市民の皆様の御支援と御協力を賜りますようお願い申し上げ、所信表明とさせていただきます。
令和6年9月9日
秋田県大館市長 石 田 健 佑