所信表明(令和5年6月議会定例会)

 令和5年6月定例会の開会に当たり、引き続き大館市の政を担わせていただくこととなりました。つきましては、議案等の説明に先立ち、今後の市政運営に関する所信の一端を申し述べさせていただきます。

  「大館を変える」と決意してから2期8年、本市が目指すべき将来像として、匠と歴史を伝承し、誇りと宝を力に変えていく「未来創造都市」を基本構想に掲げ、「大館力をみがく、つなぐ、ひらく」を理念に、まちづくりに取り組んでまいりました。
 世界的な感染症の拡大により、人の流れが停滞し、働き方や生活様式が激変する中においても、その理念は揺らぐことなく、いち早く情報を取りに行き、新たな関係性を構築したことで、ニプロハチ公ドームでの大規模ワクチン接種やPCR検査所の設置につなげることができました。パンデミックや有事においても、立ち止まることなく、そこから気付き、学びながら、まちを未来に(ひら)く準備を進めてまいりました。
 パンデミック後の新たな時代へ移り変わる、まさにこの時にあって、福原市政3期目では、これまで推し進めてきた取組みの全てを礎に、変化の波に呑まれることなく、新たな時代を見据え、4つの政策を柱に「暮らしをつないで内に優しく、まちをつないで外に強く」の2つの方向性を、さらに深め、拡大させてまいります。

 1つ目の柱、それは、ひと・ものが行き交う北東北の拠点をつくるということであります。
 秋田犬のハチが大館で生まれてから100年目となる今年は、11月の誕生祭をメインイベントとする「ハチ公生誕100年プロジェクト」を立ち上げ、現在進めております。このプロジェクトをきっかけに、様々な人や企業との新たなつながりが生まれており、多方面に広がった関係性を大切に次世代へ継承してまいります。
 渋谷区とは、昨年5月に「渋谷区・大館市交流促進協定」を締結し、観光、文化、産業の振興、スポーツを通じた交流促進、住民の交流を進めていくこととしております。
 忠犬ハチ公がつないだ渋谷区と連携しながら、「HACHI100プロジェクト」を成功させ、忠犬ハチ公の縁で結ばれた様々な交流により渋谷区との絆をより強く、深いものとしながら、この関係性を生かし、大館だけでなく「ふるさと秋田のため、わが大館ができること」を、今まで以上に積極的に進めてまいります。
 また、北東北の交通の要衝である本市の地理的な利点を生かした「大館駅インランドデポ構想」の実現にも取り組んでまいります。
 本市の強みの1つ、環境リサイクル産業では、解体した家電製品などの電子基板から貴金属類(レアメタル)を取り出しており、これらの元となるスクラップを海外から運び入れる、いわゆる「静脈物流」があります。
 また、もう1つの強みである医療関連産業では、大館で製造した製品を海外へ輸出する、「動脈物流」があります。
 この2つのモノの流れを循環させるインランドデポを、鉄路、道路、空路、航路の結節点である大館につくることで、北東北、道南における物流網の拠点となりえます。
 日本海沿岸東北自動車道の延伸、大館能代空港羽田線の3往復運航の継続に係る一層の取組みと合わせ、地域経済の活性化に留まらない、まさに国策レベルといえるこの取組みを、国や県とともに積極的に進めてまいります。
 「農は国の(もとい)なり、森は国の宝なり、そして鉱山(やま)は国の力なり」。農業法人等を母体とした研修制度の確立、異業種参入など、持続可能で成長する農業経営を目指すほか、デジタル林業や首都圏での木材利用を促進してまいります。農林産物の輸出を倍増させ、地域の活力を生み出し、環境リサイクル、医療関連産業を伸ばす取組みを進めるほか、きりたんぽの本場としての食文化の継承と供給網(サプライチェーン)の整備にも積極的に取り組んでまいります。

  2つ目の柱は、国や県と強固に連携した医療環境をつくることであります。
 市立総合病院において、国、県、そして大学からの支援を受けて現在整備を進めている、県北地域初となる「地域救命救急センター」については、急性心筋梗塞を発症した方などの24時間体制での診療が既に開始されているところであり、センターの施設整備を完成させることで市民だけではなく圏域住民の救命率の更なる向上を目指していきます。
 秋田県においては、現在、令和6年度からの「次期医療計画」策定に向けての協議が進められています。今後の人口減少を踏まえ、現在8つある2次医療圏の見直し案も示されているところです。
 今後、我が国の多くの地域が直面することが明白である少子高齢化・医師不足などの課題を解決するためにこそ、広域的な連携を含めた視点が不可欠であります。本市においては、これまでに築かれた秋田県や青森県の大学、地域の病院との連携・協力関係をさらに深め、医師の安定的な確保、そして質の高い医療の提供に努めてまいります。
 将来の人口動態等から、医師、看護師等の医療職、介護職員などの人材確保は今後さらに大きな課題となることが明白であります。市民の皆様に安心して暮らしていただくための「医療」「介護」「生活支援」の3つの一体的な体制整備に取り組んでまいります。

 3つ目の柱は、子どもたちに世界への架け橋をつくることであります。
 これまで進めてまいりました「ふるさとキャリア教育」により、大館に誇りを持ち、将来の夢や希望を抱く子どもたちが育っていると確信しています。先人から受け継いだ自然、大館暮らしを今まで以上に光り輝くものとし、大館未来型コミュニティスクールの推進により、将来のふるさとおおだてを担う「未来大館市民」の育成を図ってまいります。
 また、昨年度実施した「未来おおだてサミット事業」では、JAXA種子島宇宙センターや、ロケットエンジン開発を担う三菱重工業、ANA機体工場など、最先端の技術や専門分野に触れる場をつくることができました。今後も、子どもたちの視野を広げ、将来を考えるきっかけとなる機会を創出し、1人でも多くの子どもたちに、ふるさと大館から未来の可能性を感じてもらえるような取組みを進めていきたいと考えております。
 さらに、子どもたちが世界を知り、触れる機会を創出するため、ヨーロッパ連合(欧州連合)と、経済・産業・教育・医療など様々な分野で交流を深め、大館を担う未来の子どもたちに世界への架け橋を作ってまいります。
 子育て支援については、これまで、出産や子育てに係る経済的負担の軽減、子育て包括支援センター「さんまぁる」の充実のほか、子どもの遊び場の整備などに取り組んできました。
 国においては子ども家庭庁が発足し、今後、国の子ども・子育て施策が強化されるのに合わせ、本市では家族に基軸において、あらゆる政策を考えていきたいと思っています。そのため、「大館市家族会議」を創設し、子どもを生み育てる家族の喜びが地域社会の喜びにつながる仕組みづくり、働き方改革や大館暮らしの充実など、総合的な家族政策を積極的に検討、推進していきたいと考えています。
 子どもを育む環境の更なる充実に力を注ぐとともに、色々な人たちが子育てに関わる仕組みをつくり、子育て世帯を中心とした関係性とコミュニティの形成につなげ、大館ぐるみで子育てができる先進的なモデルをつくってまいります。
 このほか、本市の持つ観光資源をさらに磨き上げながら、国内外からの観光需要の回復に向けた取組み、野遊びSDGs事業の推進のほか、スポーツによる交流人口の拡大と地域活性化を推進してまいります。

 これら3つの柱によりまちづくりを進めていくうえでより重要になるのが4つ目の柱であります。4つ目の柱は、暮らしとまちを未来に導く羅針盤をつくるというものであります。
 大館の未来を創造するシンクタンクとして、大館市役所の職員が自分たちの組織、部や課の使命を自ら再定義し、共有することを通じて、確実に施策を進めるとともに、職員が研修できる場所と機会を増やし、人材育成にも積極的に取り組んでまいります。
 また、昨年の大雨災害など、近年の気候変動の影響による水害の激甚化、頻発化に対応するためには、河川区域や氾濫域を中心としたこれまでの対策から、遊水地や排水路の整備、利水・治水ダムの整備・活用など、流域全体で総合的・多層的に取り組む「流域治水」への転換が求められています。米代川水系の流域治水政策について、現在、国や県と連携し勉強会を開いており、今後、あらゆる関係者が参加し、協働で対策を実現する「治水・利水のまち大館」をつくっていきたいと考えています。
 有事のときに市民の生命と財産を守り抜く体制を築くための取組み、北東北3県の中心に位置する地の利を生かし、「陸援隊」として広く貢献できる体制の構築にも引き続き取り組んでいきたいと考えております。

 以上、4つの政策の柱を申し述べさせていただきました。これらの柱を大館力で前に進め「内に優しく、外に強い」令和の大館のまちづくりを進めていきます。
 市議会議員の皆様をはじめ、市民の皆様の御支援、御協力を賜りますようお願いを申し上げ、所信表明とさせていただきます。


令和5年6月5日

秋田県大館市長 福 原 淳 嗣

所信表明(令和元年6月議会定例会)