令和4年5月20日、長走風穴の倉庫が「林業遺産」に登録されました。詳しくはこちらをご覧ください。
長走風穴高山植物群落:ながばしりふうけつこうざんしょくぶつぐんらく(国指定天然記念物)
長走風穴は、国見山(454m)の麓に位置し、真夏でも0~5℃の冷風を吹き出しています。このため、標高170~240mの風穴周辺には、オオタカネバラやコケモモなど標高1000m程度の亜高山帯で見られるような植物が群生しています。
麓の風穴地帯からは冷風が吹き出るため、明治の終わりから大正時代にかけて斜面の所々に風穴倉庫が建築され、冷蔵庫として使用されてきました。主に関東方面に出荷する津軽リンゴが保存されてきました。
当地には長走風穴館が設置され、風穴のしくみや利用方法などについて学ぶことができます。また散策路からは、高い山に登らなければ見られないような植物を手軽に観察できます。自然観察や避暑にどうぞお越しください。
長走風穴紹介動画(youtube掲載)
長走風穴編
長走風穴周辺観光情報編
長走風穴周辺の高山植物群落について
風穴周辺にはオオタカネバラやコケモモなど当地方の低地には分布していない植物が多数見られます。1周20~30分程度の散策路や観察デッキから手軽に観察することができます。ルールを守って観察してください。
長走風穴高山植物(動画)
主な植物の開花日
過去10年間の開花日の記録と平均開花日を掲載(2019.2更新)
主な植物の開花期間
2012年の開花期間を掲載。当地を訪れる際のおおよその参考になります。
風穴の利用
電気冷蔵庫が無い時代に、長期間低温を維持できる冷風穴は利用価値があり、産業活動に取り込まれてきました。
全国的には蚕種の貯蔵に利用することが多い風穴ですが、長走では、むしろ、リンゴ、ナシ、ブドウなどの果物、穀類、農産種子、野菜、魚、鶏卵、醤油、酒類などを貯蔵していました。とりわけ、関東方面に出荷する津軽リンゴが主要な貯蔵物でした。
当地には佐々木耕治氏と旧白沢営林署の風穴倉庫が計9棟建設されましたが、現在、その跡地7棟を見学できます。
風穴王 佐々木耕治
佐々木耕治氏(旧大内町出身1869-1932)は、明治35年(1902)に長走を訪れた際、宿の主人から化物屋敷(風穴)の話を聞き風穴に巡り合いました。 その後、風穴の温度測定や貯蔵試験を繰り返し、明治45年(1912)に最初の冷蔵庫を建設しました。その後、風穴冷蔵庫の経営と高山植物の保護に尽力しました。
風穴現象のしくみ
麓の風穴では、なぜ夏に冷風が出てくるのでしょうか。最も有力な説は、大館市出身の荒谷武三郎氏が1920年に提唱した「空気対流説」です。
国見山の麓では、夏は地下に氷があり低温であるため、斜面下方の岩屑の隙間から冷風を吹き出し(冷風穴)、斜面上方の隙間から外気を吸い込んでいます。
冬はその逆で、斜面上方の隙間から温風を吹きだし(温風穴)、麓の隙間から外気を吸い込んでいます。このため、温風穴周辺では、真冬でも周囲の雪は解けています。
上のグラフで外気温と連動して風穴の温度が変化している部分は、風穴が外気を吸い込んでいることを意味します。
『長走風穴館』について(12月~3月は冬期閉館)
2018年4月、多言語表記を充実させリニューアルオープンしました。国内でも有数の風穴関連のエコミュージアムです。敷地内には中核となるガイダンス施設として風穴館があり、周辺には、自然遺産として「風穴の冷気」や「高山植物群落」が、文化・産業遺産として「風穴冷蔵倉庫群」があり、発見の小径(ディスカバリートレイル)と呼ばれる散策路で有機的につながっています。風穴館内には、風穴のしくみと利用がわかるパネルコーナーや高山植物が分布する理由などを解説するミニシアター(解説動画5種類x3言語と観光PR動画2種類x6言語)があり、3階から屋外の散策路へ出ることができます。Wi-Fiも完備しています。
また、風穴館の入口付近にある1号倉庫では、中に入って天然の冷気を体験することができるため、夏は暑さをしのぐ大勢のかたでにぎわいます。
夏季は風穴の冷気で館内を冷房しており、温室効果ガスである二酸化炭素の排出削減に貢献しています。
所在地 | 秋田県大館市長走字長走362-6 |
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電話番号 | 0186-51-2005 |
開館時間 | 9:30~16:30 |
休館日 | 毎週月曜日(月曜日が祝日の場合はその翌日) 6~8月は無休。 12月1日~3月31日は冬期閉館。 |
入館料 |
無料 |
アクセス |
大館駅からバスで23分、長走風穴前下車、徒歩0分 |
長走風穴高山植物群落のリーフレット(2019.2更新)
リーフレットのダウンロード(PDF2.2MB) [2240KB]
長走風穴館年報
長走風穴館年報は年刊です。入館状況、教育普及、調査研究、植物の開花日記録、1号倉庫の気象記録、管理記録などが掲載されています。下記のリンク先からダウンロードすることができます。ぜひご覧ください。
市内の風穴
市内には、長走風穴のほかにも幾つか風穴があります。人間が冷蔵庫を建築して利用してきた風穴は、長走風穴のほかに、片山風穴、岩神風穴、新沢風穴があります。
大館郷土博物館では2011年から2013年にかけて、これらの風穴現象が見られる山を踏査し、冷蔵庫跡等を再発見し、温風穴・冷風穴の現況を確認してきました。
このほかにも、風穴現象が見られる場所は、文献や口承などから複数の存在が知られています。何か情報をお持ちのかたは、大館郷土博物館までお寄せください。